ビスコッティとは?

2022/04/24


ビスコッティについて

「2度焼きした」という言葉が語源となっている中部イタリアの伝統菓子で、カントゥッチとも呼ばれます(カリカリとした歯応えがcanto(=歌う)ように聞こえることから、可愛らしい鳥のさえずり(=cantucci)という別名がつきました)。

棒状に延ばして焼いた生地を一度取り出し、温かいうちにカットして再びオーブンで焼くのです。

いわゆるクッキー菓子をイタリア全土でビスコッティと呼ぶこともありますが、言葉の意味で考えると「元祖ビスコッティ」と言えるのはこの”2度焼き”製法のお菓子になると思います。

この伝統菓子はイタリア中部のトスカーナ地方が発祥とされ、州都フィレンツェなどでは街のいたるところでお土産としても親しまれています。



ビナーシェのビスコッティの特徴

ビスコッティという言葉を分解すると、

「ビス」=2度、「コッティ」=焼いた

という意味なのですが、ビナーシェでは

「ビ」=2度、「スコッティ」=よく焼いた

と解釈しています。「スコッティ」は「あらら、焼きすぎちゃった」というニュアンスでも使われたりするのですが、ロースト肉でも野菜でも「半生」よりも「中までしっかり火を入れた」料理を好むイタリア人にとっては、ときに大切な調理表現なのです。


ビナーシェでは「小麦粉にしっかり火を入れ、その味と香りがいつまでも口の中に余韻として残る」ことを目的に、とても長い焼き時間を設けています。

焦がさないように、種類ごとに細かい温度調整をしながら焼きこみますので、手間はかかりますが、これにより他の菓子にはない食感や香り、余韻の長さが生まれるのです。



ビスコッティに合わせる飲み物

トスカーナではレストランのデザートメニューでも「ビスコッティ」が載っています。日本でお品書きに「お饅頭」とか「お煎餅」が載ってるようなもので、ちょっと不思議ですよね。でもそこには必ず’セット’になる飲み物が併記されているのです。

その飲み物とは「ヴィンサント(=聖なるワイン)」という名の甘口ワインです。常に「ビスコッティとヴィンサント」という書き方がされていて、「食事は食べ終わったかい?、まぁゆっくりしていきなよ」という雰囲気でサーブしてくれます。つまりこれは食後の会話の潤滑油のようなポジションのお菓子なのです。食事時間の会話を大切にするイタリア食文化において、度数の高くない甘口のワインをちびちびやりながらビスコッティも合間につまむというのは非常に「ちょうどいい」アイテムだと思います。


日本ではこの甘口ワインに準ずる飲み物の習慣がないので、コーヒーやカプチーノ、紅茶などがそれに代わって認知されているように思います。でも実はウイスキーなどの蒸留酒だったり、少し甘いニュアンスのある赤ワインとも相性は抜群なんです。是非それぞれのスタイルでお楽しみくださいね。



チョコレートのビスコッティ

ビスコッティといえばイタリアでは90%くらいが「アーモンド入り」の印象ですが、2番目に見かけるのはチョコレート入りのビスコッティ。

ビナーシェではカカオ使用量の多い「純チョコレート」の規格のものを厳選して使用しています。よく焼いたあとでも風味を失わず、粉のしっかりした味わいとの相性もぴっりです。




ビナーシェオリジナルのビスコッティたち

お菓子のルーツには敬意を持って日々取り組んでいます。とはいえやはり「他にもこんな美味しさが表現できるんじゃないか」という創造もまた大切なものと考えます。

ビナーシェでは「いちじく&クルミ」や「アールグレイ」、はたまた「パルミジャーノ」や「黒糖&マサラチャイ」などの独自の味わいをビスコッティで表現しています。

店主が大切にしているのは、ずばり「美味しさの基準点」。その味がきちんと表現できているか、ビスコッティらしさを大切にしつつ、作っている自分が「美味しいね♪」と思えているか、そういう「ものさし」に責任を持ってお出ししています。なので簡単に新しい味がリリースできませんが(言い訳?)、どのビスコッティにも「私はこれが一番好き!」と仰って下さるお客様の声があり、それがとっても励みになっています。

是非是非、他とは違うお菓子たちを楽しんでください!



筆者:店主 山本 慎弥

ビスコッティの本場である、イタリア、フィレンツェで修行。ビスコッティ専門店Binasce(ビナーシェ)の店主。
シェフプロフィール詳細など、ビナーシェについて